「濹東綺譚」永井荷風

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

昭和初期の夜の街がリアルに描かれてました。
夏の夜。
窓を開けてラジオを流す隣家の騒音から逃れるようにして、夜の街を行く主人公の大江。

主人公は荷風自身をモデルにしていて、作家を生業にしている。
「失踪」という、大江の作品との兼ね合いが良かったです。
出来ればこの「失踪」も全編読みたかったです。
円タクを利用したり、銀座のカフェー(カフェに非ず)の女給を作品のヒロインにしたり、ラジオが庶民の娯楽の代表だったり、当時の交番のお巡りさんの態度だったり、当時の様子が多少なりとも味わえました。
また、現代では昭和を懐かしむ傾向があるけど、それと同じ様に昭和初期の時代も、大正や明治を懐かしんでいたのが、いつの時代も昔を懐かしむ気質があるのだと感じられました。