「娼年」石田衣良

娼年 (集英社文庫)

娼年 (集英社文庫)


私にとっては、すごく現実離れしている作品でした。
まず主人公が男性という時点で感情移入もできなくて。
良い意味で、傍観できる作品でした。
だから、この物語で起こっている事は全て絵空事のようで・・・

娼年」と言うのは男性版の娼婦の事で。
女性がご指名をすると経営者が娼年にケータイで待ち合わせ場所を指示して、それからデートしたり色々と。
でも主人公を好きな大学のゼミ仲間に経営者が密告されてクラブは崩壊。
でも経営者の娘の頭の中には店の顧客情報が残っている。
彼女の記憶を元に、ほとぼりが冷めたらクラブを再開しようと話す娼年たち。
世間からみれば立派な犯罪行為なんですが、最初からこの話は絵空事のような感じがしていたので、その決断については「別にお客さんも喜ぶんだし、良いんじゃない?」って感じで、私としては後味の良い面白い作品でした。

今回初めて石田衣良作品を読んだのですが、無駄のないスッキリとした作品でした。
主人公が遭遇する一つ一つの出来事もそれぞれが後の話に繋がっていってたし、登場人物も多すぎず少なすぎず、ページのボリューム的にも長すぎず短すぎず・・・。
そしてラストの後味の良さ。
全てにおいて、計算された感じのする作品でした。それが良いのか悪いのかは別として。